仮想通貨(暗号資産)の税金のおはなし
ビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨。通貨なんだから、電子マネーと同じ感じかな?と思うと、これが実は全く違います。法人税法上は、どちらかというと「有価証券」の仲間です。それで、法律上は「仮想通貨」ではなく、「暗号資産」に名前が統一されました。でもまだまだ仮想通貨の方がピンとくると思うので、今回は仮想通貨のままいきますね。
例えば、ビッグカメラで10万円のパソコンを買ったとします。その時、現金で支払っても、クレジットカードで支払っても、Suica等の電子マネーで支払っても、レジで出したのが現金かカードかスマホかくらいの差しかありません。10万円支払ってパソコンを買っただけですね。これが、仮想通貨であるビットコインで支払ったらどうでしょう。
確かに、10万円のパソコンを買って、ビットコインを10万円分支払っています。ただ、このビットコイン、本当に10万円で買ったものですか?そう、仮想通貨が他の通貨と決定的に違うところは、まずこれです。
仮想通貨には相場があり、価格変動をします。
電子マネーSuicaにチャージをしておいたら、(ポイントくらいはつくかもしれませんが)いつのまにか増えた、とか目減りしてた、とかないじゃないですか。それがビットコインだと、相場の実際の値動きは分かりませんが、10万円の支払いをしたそのビットコインを買ったとき、8万円だったり12万円だったりする可能性があるわけです。そうすると、10万円のパソコンを買ったとき、同時に「8万円で買ったビットコインが10万円で売れた」とか、「12万円で買ったビットコインを10万円で売った」という取引が行われているわけ。つまり、2万円得した、損した、となる。当然損得絡めば税金計算してね~となるわけです。これは、ビットコインを売ったり、他の仮想通貨と交換した場合も同じです。仮想通貨を売ったり、仮想通貨を使って物を買ったりするたびに、税金の計算が必要になります。
そしてやっかいなのが、株式のように取引所が年間取引の報告書を出してくれて計算できます、とならないところ。なぜなら、株式は基本的に1つの取引所の中で取引をしますが、仮想通貨は、AとBとCで買った仮想通貨をDで売る、ということもあるわけで、結局ひとつひとつの取引を追っていく必要があるわけです。その時、売った価格は見れば分かりますが、買った価格はどうでしょうか。宝石のように、ひとつひとつ別のものなら、どれを売った、と特定できる(個別法)と思いますが、ビットコインはいつ買ってもビットコインで同じものですよね。じゃあ、いついくらで買ったものを売ったの?となりますが、ここはきちんとルールが決まっています。
移動平均法か総平均法。移動平均法は、その時点で今まで買った同一銘柄を全部平均して単価を計算しましょう、という方法。売ったあとまた買って売って、買って、とやっていると、売却のたびに単価の計算をしなおす必要があります。総平均法は1年通じて単価を計算しますので、計算は1回ですみます。ただ、法人の場合は帳簿を作成する必要があるので、1年間終わらないと単価の確定しない総平均法は使いにくいでしょうね。
日本の取引所の場合はここまでですが、海外の取引所を使っている場合には更にやっかいです。まず、明細が外国語!さらに、タイムゾーンが日本と違う場合は、日本の基準になおす必要があります。そして、日本の税金は日本円で計算するため、いちいち円換算が必要です。それでも明細がもらえればまだいいですが、きちんと出してもらえるかも微妙なんだとか。形式もまちまちで、うまく必要なものを請求できるのか、不安が残りますよね。
さて、ひとまずきちんと取引を追って、計算ができたと仮定しましょう。個人の所得税の場合は雑所得で総合課税になります。収入から経費を引いておしまい。ただし、株のように分離課税の取り扱いはありません。したがって、累進税率が適用されますから、高所得者ほど税金が高くなる仕組みです。これは、「よく分からないから、対応しないよ」という、結構投げやりな理由らしいです。法整備の方が、どうしても後手後手になりますからね。他の所得との損益通算もできません。
法人の場合はもっと複雑で、期末に時価評価が必要になります。ビットコインを全く動かしていなくても、期末時点で値上がりしていれば税金がかかるということ。資産なので基本的にマイナス評価にはなりませんが、堅実な事業をする会社が投資で失敗することがあるように、法人でビットコインをたくさんもっていたら、それなりにリスクがあると考えたほうがいいでしょうね。(価格変動だけでなく、流出等セキュリティ上のリスクもありますね。)
以上の通り、税金の申告ということを考えると、現状ではまだまだ法律も制度も未熟で、税金も冷遇されているのかな、と思います。また、顧問税理士にそのまま気軽に申告をお願いします、というのも結構難しいかもしれません。しっかりと必要な資料を用意できれば問題ないでしょうが、海外の取引所があったり、たくさんの取引をされる場合は、仮想通貨の申告を得意とする事務所にお願いしたほうがいいでしょう。こういった計算をする専門のソフトを導入している可能性が高いですから。
最近心配なのは、そのうち相続財産で仮想通貨を持っている人がでてくるだろうな、ということです。相続税は、ただでさえご本人がいらっしゃらないので、全ての財産債務を把握するのは難しいです。もし仮想通貨を持っている一人暮らしの方が亡くなったとしたら、相続人は全然気づかなかった、という可能性もありますよね。また、知っていたとしてもパスワードがないと引き出せないそうです。きちんと遺言書なりエンディングノートに記載して残しておくことが必要になるでしょう。
仮想通貨については、まだまだこれから法整備が進み、日々取り扱いも変わっていくと思います。仮想通貨を取引される方は、業者や税理士任せにせず、きちんとご自分で資料を集めたり、ご自分に何かあった時にパスワードを残したりという対応が大切になると思います。